研究会の記録
(MAKINO 第128号 p9より抜粋)
824回 野外研究会 2023-11-17

練馬区立牧野記念庭園
坂本アヤ子・長島秀行(ともに本会会員)

 午前10時に牧野記念庭園に会員他23名が集まった。天気は午前中は雨、午後は曇り。
 本日は参加者を3班に分けて、特別展のタネ展の展示会場、資料展示室、牧野富太郎博士の書斎の三箇所を、富太郎博士のひ孫の牧野一浡さん、学芸員の田中純子さん、伊藤千恵さん、牧野由美子さんの4人の方々でご案内、説明をいただいた。何度もここを見学していたので、よく知っているつもりでいたが、あらためて丁寧なご案内をいただくと、博士の旺盛な研究心と愉快な面など、牧野博士を一層深く理解できた。…(以下略)
【当日の写真から:タネ展の展示



研究会の記録
(MAKINO 第128号 pp910より抜粋)
825回 研究会 2023-12-10

板橋区立赤塚植物園
荒尾精二(本会会員)

 昭和56年に開園したこの植物園は、武蔵野台地北端の荒川崖線の丘陵を利用して作られている。北隣の赤塚城跡にはコナラ、クヌギ、イヌシデ、シラカシなどが多く見られ雑木林であったことが解る。谷本先生は少年時代、練馬、板橋を行動圏とされていた。かつての武蔵野の自然の豊かさについて語られた。この辺り一帯は将軍家の御鷹場だったこと。家光の時代に行われた鷹狩で、850頭もの鹿を仕留めたことの記録がある、江戸中期には獲物の記録がなくなる。荒川の度重なる氾濫が生物多様性に寄与していた。明治以降、近年の都市化の波で生物の種類が減少。人間の干渉による自然の豊かさの減退であったと思い知った。
 赤塚植物園は、各種の植物が一定のコンセプトのもとで展示されている。本園・日本文化との深い万葉・薬用植物園および往時の畑の風景を再現した農業園で構成されている。…(以下略)
当日の写真から:リュウキュウマメガキ】



研究会の記録
(MAKINO 第128号 pp1011より抜粋)
826回 野外研究会 2024-01-17

都立小山内裏公園
塚野洋子(本会会員)

 2024年幕開けの第1回目の野外研究会は町田市内の都立小山内裏公園で挙行された。京王相模線「多摩境駅」改札口に会旗のもと23名が集合した。小山内裏公園は多摩丘陵の骨格主稜線上に位置し、北側は多摩川の支流である太田川の源流部にあたり、湧き水豊かな谷戸の地形が良好な姿で保存され公園の大部分はコナラ・クヌギ・エゴノキ・イヌシデ・ ヤマザクラなどの雑木林で覆われていた。
 公園入口前にハナミズキの街路樹が植栽されておりました。ハナミズキは1912年に尾崎東京市長がアメリカへ桜の苗木を送った際にその返礼として日本へ送られてきた「日米親善の木」として有名である。日比谷公園や小石川植物園などに植えられたが、現在は世田谷区にある「都立園芸高校」に一本あるのみとか。
講師はハナミズキ(別名アメリカヤマボウシ)の説明から始まり、予め配布された冬芽観察資料を参加者全員に示しながら「鱗芽」「裸芽」「隠芽」などについて冬芽の観察ポイントを極めて細かく解説されました。…(以下略)
【参考写真:タブノキの冬芽(鱗芽の例:内田典子会員提供)




研究会の記録
(MAKINO 第128号 pp1113より抜粋)
827回 研究会 2024-01-28

室内会(総会・講演会)
青羽美津子・岡崎惠視(ともに本会会員)

 令和6年(2024年)度総会及び講演会が新宿区立歴史博物館講堂で開催された。
 1)総会(10:20~12:00)
 総会には会員26名の出席があった。司会進行は土屋喜久夫幹事が務めた。谷本𠀋夫会長の挨拶の後、議長に牧野澄夫幹事、書記に青羽美津子幹事が選出された。
  1.令和5年(2023年)度事業報告
 松田敬子幹事(事務局会計係)から、1月に総会が予定通りに行われ、野外研11回、室内会が1回、役員会が4回、企画委員会が3回、会計監査会が1回開かれたことが報告された。NHK連続テレビ小説「らんまん」が放映されたこともあり、テレビ、新聞、出版関係に多数対応したことも報告された。
[中略]
  6.役員改選
 岡崎惠視幹事(事務局庶務係)より役員改選について会則が提示され、任期は2年で今年が改選の年であることが説明なされた。そして、運営役員会議(本年1月12日開催)で推薦された次期役員候補が示された(任期:2024~2025年度)。その結果、会長 谷本𠀋夫、副会長 豊田武司、顧問 加藤僖重、同 田中肇、同 牧野一浡、幹事 青羽美津子の他11名、会計監査吉野弘子・熱田典子が承認された(以上は前期からの留任。会誌127号参照)。また、推薦通り、3名の新幹事(飯島和子、大城繁雄、永井功の各会員)が承認された。そして、新幹事から簡単な挨拶があった。[総会 以下略]

 2)講演会(13:00~16:00)
 午後の講演会には、一般者を含めて36名の参加があった。座長を岡崎惠視幹事が務めた。演者は長島秀行幹事(東京理科大学名誉教授)と谷本𠀋夫会長(宇都宮大学名誉教授)で、各講演後には活発な質疑応答がなされた。下記に講演要旨をしめす。
 講演会は加藤僖重顧問の閉会の挨拶をもって16:00に終了した。
 1. 温泉と生物(長島秀行)
 古くから、日本各地には野生動物による温泉の発見伝説が数多く知られていて、それに因んで、温泉名として鹿の湯、熊の湯、駒の湯、鷺の湯などが残されている。しかし、鹿が実際に温泉で傷を癒したとか、熊が温泉を発見したとかいう確かな証拠は見つかっていない。実際に、温泉に生息していることが明らかになっているのは、多くはバクテリアや微細藻類、原生動物などの微生物である。
 日本における温泉動物に関するこれまでの記録では、原生動物・繊毛虫類(ゾウリムシのなかま)が最も多く185種、ついで節足動物・昆虫類(ユスリカやオンセンアブなど)147種、原生動物・肉質虫類(アメーバのなかま)46種、軟体動物(ヒメモノアラガイ、カワニナなど)29種が観察されている。…(講演以下略)

  1. 2.NHK趣味の園芸「牧野植物に出会う」こぼれ話(谷本𠀋夫)

NHKのテレビドラマ「らんまん」は、牧野先生をモデルにして放送された人気番組でした。園芸植物の番組のミニコーナーでも牧野先生が親しんだ高尾山で、先生ゆかりの植物を紹介。その案内役を仰せつかって6回6種類の植物を訪ねました。
 タイトルは「牧野植物と出会う」で第1回スミレ、『趣味の園芸』2023年4月号揭載、放送日4月16日、以下、2回目イナモリソウ、5月号、5月21日。3回目イワタバコ、7月号、7月2日。4回目ウバユリ、8月号、8月20日。5回目タマアジサイ、8月号、8月27日。6回目レモンエゴマ、9月号、9月24日。雑誌の原稿は、webでインタビューを受け、それを原稿にまとめたものです。分類学的に個々の植物の違いや特徴を説明、記載したのではあまり興味を持ってもらえそうもないことに悩み、分類学的な特色よりも生育場所などの生態的な特徴の説明を重視した結果、形にはなったようです。マキノスミレとシハイスミレは典型的な姿の写真がなく、手塚さん、山田隆彦さんのご協力を得て、恥ずかしくない写真が使えました。
…(講演以下略)
【当日の写真から:講演者の二人