研究会の記録
(MAKINO 第130号 p9より抜粋)
835回 野外研究会 2024-07-24
都立 向島百花園
飯島和子(本会会員)

 向島百花園は、花屋敷として、江戸文化年間の開園から約200年、多数の人々に親しまれてきました。ここで、観察できる植物は500種を超えるといわれています。当日は天候には恵まれ、非常に暑い日の観察になりました。休憩時間には、かき氷を食べて、暑さをしのいでいる参加者の姿もみられました。
 主に開花している植物を中心に、約40種の草本植物と木本植物が見られました。
 草本植物:ハマナデシコ/ミズヒキ/ギボウシ/ヤマユリ/ヤブレガサ/オミナエシ/ヤブカンゾウ/ヌマトラノオ/ヘビウリ/…(中略)
草本植物:タイサンボク/ノウゼンカズラ/ヤエクチナシ/シモツケ/ノウゼンカズラ/シロミノコムラサキ/コマツナギ/ネムノキ/ニワフジ/ムラサキセンダイハギ/ガクアジサイ…(以下略)
当日の写真から:ヤマユリ

研究会の記録
(MAKINO 第130号 pp910より抜粋)
836回 研究会 2024-08-25
室内研修会
牧野澄夫・松田敬子・坂本アヤ子(いずれも本会会員)

 今年度は飯島和子会員、根田仁先生(森林総合研究所フェロー)、谷本𠀋夫会長のお三方でしたが飯島会員が急病で講演はできず、代りに谷本先生にお願いして2件の講演を引き受けていただきました。
 根田 仁 先生「日本のキノコの分類研究の歴史」
 江戸時代は本草学(中国や東アジアで発達した医薬に関する学問)から発展して全国から集められた産物の中から「きのこ図譜」が作成された。また丹羽正伯、松岡玄達、市岡智寛、坂本浩然、岩崎常正等が菌類の彩色図譜などの資料を残されている。
 幕末から明治時代は欧米研究者が来ている。その頃は菌類は植物と同様に扱われていたようだ。米国、英国、オランダ、フランスからの調査隊によって、植物や菌類が詳しく研究発表された。
 日本人の菌学の創始者は田中延次郎。白井光太郎は菌学研究の基礎を高めた。安田篤・川村清一・今井三子・小林義雄・今関六也などにより菌類図鑑や研究誌が出版された。…(以下略)
当日の写真から:根田仁先生


谷本会長「奥日光の戦場ヶ原の観光絵葉書および林業施業記録によるカラマツ林景観の変化と湿原乾燥化に関する検討」
 戦場ヶ原は湿原で有名だが、明治33年の絵葉書に、日光が分布の東限とされるカラマツの写ったものが販売されていた。本来カラマツは男体山の麓周辺や湯川沿いの地に生育していて、現在もその古木が残っている。しかし、戦場ヶ原湿原にも矮性化したカラマツが生育している。昭和の初めに戦場ヶ原湿原を利用するためにあれこれ施策され、特に排水を行った結果、乾燥が進んだとされている。…(以下略)
当日の写真から:谷本会長
谷本会長「火山列島、硫黄島と小笠原父島の植物」
 硫黄島は小笠原村から280キロほど南にある。激しい戦争で両国の兵士が多数亡くなった。谷本会長はここの訪島は自由にできないので、牧野植物同好会誌123号と124号に故長谷川義人先生の観察記録が揭載されているのでそれを見てくださいと説明がありました。長谷川先生は水道施設の会社を経営してらしたので自衛隊の仕事で何度も硫黄島に足を運ばれたそうです。…(以下略)


研究会の記録
(MAKINO 第130号 p9-10より抜粋)
837回 野外研究会 2024-09-25
千葉県佐倉市 シダ植物観察会
手塚武博(本会会員)

 天気曇り午後小雨。京成線大佐倉駅で、10時に倉俣先生、係2名、参加者11名が集合し、次ページ写真右の朱線の通り山林、本佐倉城跡(写真右側)、田畑の周辺を観察しながら歩いた(写真はgoogleマップ゚借用、左上赤枠は大佐倉駅)。
 少し歩くとシケシダ類がまとまって生育していた。シケシダ、フモトシケシダの他に、タマシケシダ等雑種もあるようだ。「シケシダの仲間は全て有性生殖種で、雑種ができやすい。雑種であることを確認するには、胞子の発育状態を顕微鏡で調べることが必要である。また、雑種の形は両親のどちらに似るかによって少し違う」等、ご説明いただいた。
 次いでリョウメンシダ。縄文土器の縄文はリョウメンシダを編んだ縄でつけられた物もあるとのこと。アスカイノデもあった。アスカイノデの分布の中心は関東地方にあり、西日本では一部に稀に見られるとのこと。…(以下略)
当日の写真から:ヒメイタチシダ


研究会の記録
(MAKINO 第130号 p10-11より抜粋)
838回 野外研究会 2024-10-23
奥日光 戦場ヶ原の晩秋
坂本アヤ子(本会会員)

 本日のコースは戦場ヶ原のみの観察で赤沼まで向かう。講師は谷本𠀋夫会長。参加者16名。日光植物園の清水淳子さんとバス停赤沼で待ち合せ、東武日光駅前発10時5分発のバスに乗車。少し小雨で気にかかる。山全体では樹木の紅葉はわずかで「竜頭の滝」付近が少し紅葉。
 赤沼でバスを降りると11時半なので屋根付きの休憩所で早めの昼食をとる。昼食後すぐ戦場ヶ原に入り湯川沿いを歩いて、観察を行う。右手の戦場ヶ原はスゲ類や草木の草紅葉で黄金色に一面輝いて見える。整備された木道をすすむ。
 今日はオオアゼスゲの谷地坊主の勉強会。谷地坊主とは湿原に生えるスゲ類の根っこが固まり丸くなり、その上部に新しい芽ができて花穂など付け、また翌年それを繰り返し生育して上に伸びても地中には根が伸びていけないので坊主頭の上に次々生育している状態。谷地坊主の上に他の植物が住み着いて成長している。ワタスゲ、カラマツ、ホザキシモツケなど。
 湿原だけでなく湯川の流れの中にも谷地坊主が見られ、スゲの上部に緑色した若い茎がのびている。…(以下略)
当日の写真から:草紅葉