研究会の記録
(MAKINO 第123号 P10より抜粋)
第796回 野外研究会 2021.12.5.

百年祭 明治神宮の森 今と昔
松田 敬子(本会会員)

 集合は南参道の入口の大鳥居の前広場。参加者は22名。講師は谷本𠀋夫会長と加藤僖重顧問。
 広場にはクスノキ、ケヤキ、スダジイ、カシ類の大木が樹叢となっているがクロマツはほぼ枯れている。
 南参道から入る。参道の林縁にはカシ、シイ、アカマツ、サワラ、エノキ、イヌシデ、ナラ、イチョウ、カエデ、クヌギ、ハゼ、ヤマザクラ類が成長している。神宮の森の中は神宮御苑、また一部には掘り削られた谷底低地の小川が流れているが大部分は武蔵野台地の一角を占めて樹種の生育には適さない場所がある。自然の地形を利用してあえて植栽をしてない所があったがそこも初期の理想の形と違いアオキなど低木が多く育っていた。
 谷本先生は20年前に神宮の森の生い立ちを調査。「明治神宮はあくまでも人工の森。目的は森厳幽邃、天然更新によって永久に神社林に相応しく100年先でも保つ森を創ることであったが、現在は人の手がはいらないと狭い都会の森では大変難しいこと」とお話を伺いました。…(以下略)
【写真:本殿神殿の庭の大クスノキ】

 


研究会の記録
(MAKINO 第123号 P10より抜粋)
第800回 野外研究会 2022.3.27.

多摩森林科学園を訪ねて
牧野 澄夫(本会会員)

 第800回野外研究会は3月27日(日)、多摩森林科学園で行われた。当日の参加者は14人、講師は豊田武司先生、当会の副会長だ。ここにも何年か勤務されたことがあるという。今年、下見を含めて3回目だそうだ。
 3月27日とは微妙な日だ。暖かい年であればソメイヨシノはもう終わっているし、寒い年はまだ咲かないだろう。今年は桜の季節には少し早いというが、早咲きの桜が咲きだしている。園の入り口にはヤブザクラ(❶)、科学館前の植え込みの中にホシザクラ、そして勝木園長らが2018年に命名したというクマノザクラ、これはサクラ保存林の中ほどに5本植栽されていた。まだ樹形は小さい。一つの花芽に2個の花が咲くというが、これは3輪ほど咲いていた。もちろん初見だ、ラッキー。…(以下略)
【写真:ヤブザクラ】


研究会の記録
(MAKINO 第123号 P11より抜粋)
第797回 研究会 2022.4.24.

室内会(総会・講演会)
青羽 美津子(本会会員)・岡崎 惠視(本会会員)

 令和4年(2022年)度総会及び講演会が、4月24日(日)に新宿区立歴史博物館講堂で開催された。これは、当初1月23日に開催される予定であったが、新型コロナ蔓延防止等重点措置のために当日まで延期されていた。

1)総会(10:20-12:00)
 総会には会員18名の出席があった。司会進行は長島秀行会員(❶)が務めた。谷本会長の挨拶で会は始まり、議長書記の選出では議長に牧野澄夫会員、書記に青羽美津子会員が選出された(❷)。…(以下略)
 10時過ぎに駅前を出発し、先ず、1号路の入口で、「薬王院」の大きな石碑の台座に這うシノブを観察する。このシダは、シノブ玉としてインテリヤや盆栽にも使われている。…
(以下略)

2)講演会(13:00-16:30)
 講演会には、一般者を含めて27名の参加があった。当初、田中肇氏(本会顧問・フラワーエコロジスト)の講演が先に行われる予定であったが、同氏のご都合で、谷本𠀋夫氏(本会会長)が最初に講演された。それぞれの講演に先立ち、座長の岡崎惠視氏(本会会員)から講師の紹介(著書・受賞歴等)があった。各講演後、活発な質疑応答がなされた。講演会は豊田武司副会長の閉会の辞をもって16:30に終了した。以下に各氏の「講演要旨」を示す。

• 尾瀬ヶ原の生い立ちと自然、湿原植物の役割(谷本丈夫)
尾瀬ヶ原は本州最大の高層湿原とされています。高層湿原には降雨に依存したミズゴケ類を中心とした植物群が生育しています。低層湿原は浅い沼地や河岸段丘の氾濫原水際に発達し、弱い流れや地下水に依存してヨシが優占する群落が形成され、その遺体で泥炭地が発達しています。泥炭地はそれぞれの場所で生育した植物が、腐朽、分解できずに堆積したもので、泥炭の構造的な視点から名づけられています。泥炭地に生育している植物群の景観を区分する立場では、ミズゴケを主体とする泥炭地は高層湿原もしくは高位湿原で、ヨシからなる泥炭地は低層(低位)湿原に区分され、それぞれの中間的な構造、植物群を持つ泥炭地は中間湿原に区分されます。尾瀬ヶ原にはミズゴケの生育する場所は少なく、ヨシやヌマガヤの優占する場所も見られます。…(以下略)
【写真:講演される谷本講師】

• 私の花生態学60年(田中 肇)
今から3000年前のアッシリアの遺跡に、王と思われる人物や王を象徴する鷲の化身が、ナツメヤシの受粉作業をしているレリーフがあり、人類が植物の性を認識していたと考えられています。しかしBC300年代にアリストテレスが植物の性の存在を否定したため、その後2000年間植物の性は論じられなくなりました。
1696年に、花生態学の夜明けとも言える発見が Camerarius によってなされました。クワ、トウゴマ、ヤマアイで「種子生産には、葯が子房内の幼植物を調整しなければならない」と言うのです。同じ年に日本では宮崎安貞が著書『農業全書』の中で「五穀にかぎらねど、万の物、たねをゑらぶ事肝要なり」と品種改良につながる農法について述べています。
1761年から1766年の間にKölreuterがナデシコ、タバコ、アラセイトウなどで昆虫からの隔離実験をして、昆虫による受精(今日でいえば受粉)作用を明らかにしました。
花生態学の父と言われるChristian Konrad Sprengel が1793年に『花の構造と受精に自然の秘密を見た』と題した著書を著しました。ぺージ大の図版25枚に450種ほどの花の構造や機能、そして昆虫との関係が細密に描かれています。…(以下略)
【写真:講演される田中講師】



研究会の記録
(MAKINO 第123号 P14より抜粋)
第801回 野外研究会 2022.4.28.

南足柄 最乗寺周辺の植物
北住 拓也(本会会員)

 大雄山駅に10時集合。講師に松岡輝宏氏を迎え、20名が最乗寺へと向かいました。最乗寺は曹洞宗の古刹で天狗の伝説が遺されています。寺の建立に尽力した道了尊という人が、師の歿後天狗に化身し、寺や参拝者を見守ってくれているとの事。杉の古木が多く、林床にはシャガ、ウバユリ、ウワバミソウ、ミツバ、アカネ、ホウチャクソウ、ヤマホトトギス、そしてウラシマソウが多く見られました。そして念願のヤマトグサ(❶)ですが、余りに小さくて、一人で歩いていたのなら、自信を持って”見逃していた”植物でした。『牧野富太郎植物記8』(あかね書房)によると、牧野先生は明治17年に土佐で発見したのですが、花が咲いておらず困っていた所、明治19年に土佐の渡辺荘兵衛という方が花の標本を送ってくれて研究されたそうです。そして明治22年、日本人として初めて学名をつけて発表した記念碑的植物です。こんな小さな植物が記念碑とは、何だか可愛らしいですね。当日観察の株は写真の通りですが、花弁は無く萼片が3枚あり、一つの株に雄花と雌花を別々につけます。又オトコヨウゾメの様に乾燥すると黒変する性質を持っているらしく、季節をかえて行けば一人でも見つけられるのかも知れません。…(以下略)
【写真:ヤマトグサ(森弦一会員撮影)】


研究会の記録
(MAKINO 第123号 P14より抜粋)
第802回 野外研究会 2022.5.22.

野川公園
飯島 和子(本会会員)

 5月22日(日)武蔵小金井駅(中央線)中央口9:50集合。昨夜まで降っていた雨も朝にはやみ、観察日より。駅前からバスで、二枚橋下車。講師は大石征夫氏(本会会員)、田中肇氏(本会顧問)にもご指導いただいた。世話係は岡崎惠視氏(本会会員)と坂本アヤ子氏(本会会員)。参加者は14名(会員12名、一般2名)。
 二枚橋バス停から公園内に移動。元ゴルフ場であったという芝生内で、チドメグサ(ウコギ科)の観察。全員が芝生に顔を近づけて探し(写真❶撮影坂本アヤ子氏)、光沢のある丸い葉と10個ほどの花の集まった花序を見つけることができた。
 開始のあいさつ後、樹木の観察。芝生内に植えられた樹木は孤立していて観察しやすい。
 はじめは遠くからでも目立つ巨木のエノキ。昔は一里塚に植えられ、今でも残されている木を見かけることがある。国蝶であるオオムラサキの食草であることの説明後、講師が持参してくださったオオムラサキの75円切手を見ながら、記念切手ではなく通常切手であることが貴重であるとの説明があった。…(以下略)
【写真:観察風景(坂本アヤ子会員撮影)】


研究会の記録
(MAKINO 第123号 P15より抜粋)
第803回 野外研究会 2022.5.29.

軍荼利山観察記録
松野 裕二(本会会員)

 気温30℃を超える真夏の様な暑さの中、10名がJR外房線東浪見駅に集まりました。本日の講師は、シダ植物に詳しい倉俣武男さんです。そもそも軍荼利山という山はなく山号で、寺号と合せると「軍荼利山東浪見寺」ということでした。この近くの海岸では黒潮が通っていて、気候が温暖な上、年間降水量も多く湿潤で、常緑広葉樹林が発達している一方、スギの植林があるという特異な環境で、これまでに74種類ものシダ植物が観察されています。
 まず道路沿いには、ウツギやガマズミ、フウトウカズラ、池には帰化植物のオオフサモ、キショウブが繁茂し、その間からウキヤガラが生えていました。軍荼利山を散策すると、最初にハチジョウカグマ(❶)が見られました。芽出しが赤く、小羽片の基部がくびれていて、葉を太陽にかざすと脈が細かくハッキリ透けているのが特徴でした。この場所が北限で、50年前に最初に発見されたそうです。…(以下略)
【写真:ハチジョウカグマ】