研究会の記録
(MAKINO 第126号 P8-9より抜粋)
第809回 野外研究会 2022-10-23

箱根旧街道のカツラ
森 弦一(本会会員)

 バスは10時10分発で、全員乗りこみ、東海道を登り、十数分で降車予定の須雲川バス停に到着。
 道沿いに少し登ったところの空き地で集まり、松岡さんから、この先の須雲川自然探勝歩道に入り、観察しながら歩くという説明があった。そのコースをふりかえると、途中にある発電所手前で昼食をとり、食後、須雲川にかかる橋をわたって一度東海道に出て、その先で旧街道に入り、カツラの大木を拝み(地球で最も長命のいきものは植物で、その代表格は大木であることはまちがいないので筆者は拝まずにはいられない)、江戸時代に整備されたという石畳の道を畑宿まで、というものである。この石畳を上がった先にある畑宿バス停から箱根湯本に戻って解散となった。
 もとにもどろう。探勝歩道の入口まで、車の往来がかなりある東海道を注意しながら歩く。途中の石垣にコバノヒノキシダ(❶)などが着生していると講師から注意をうながされる。注意されなければ素通りしてしまうことだろう。…(以下略)
【当日の写真から:コバノヒノキシダ】


研究会の記録
(MAKINO 第126号 P9-11より抜粋)
第814回 野外研究会 2023-02-18

新宿御苑
岡崎 惠視(本会会員)

 午前10時、新宿御苑新宿門を入った広場に集合し、講師は筆者が担当しました。当日の係(世話役)は坂本アヤ子幹事と松田敬子幹事でした。好天に恵まれ、参加者は24名(会員19名、非会員5名)。高知新聞社の取材があるので、少々緊張しました。
 まず広場で当日の資料を配布しました。そして、園内を左周りに進み、樹木の下に散らばったタイサンボクの花(らせん状配列の花)の花被片、ヒマラヤスギの球果の一部と剥がれ落ちた翼のある種子等を観察しました。モミジバスズカケノキの果実(複合果)も観察しましたが、この実は固く割ることができませんでした。樹上で自然に割れて種子が飛散することを後で知りました。梅園では、梅の花が満開、隣にはサツマカンザクラが満開でした(図❶)。ここで、桜と梅の花を比較し、桜には花柄が有るが梅には無く、果実の柄の有無にも反映されていること、桜の皮目が幹や枝の伸びる方向と交叉するが、梅では不規則であること、等から桜と梅は識別できることを説明しました。また、両者の花は自家受粉せず、自家不稔(自家不和合)であるので、サクランボを生産している農園では人工的に他の品種との交配が必要であること、梅林には異なる品種株が必ず植えられているといった話もしました。…(以下略)
【当日の写真から:サツマカンザクラ】



研究会の記録
(MAKINO 第126号 P11-12より抜粋)
第815回 野外研究会 2023-03-22

小石川植物園で学名を学ぶ
池田 正子(本会会員)

 お天気に恵まれ、4月から始まるNHKの朝の連続ドラマ「らんまん」の影響か参加者が30人といつもより多かった。NHKと東京新聞の取材班も同行。
 入口横で、横山茂先生が準備された今日の資料「小石川植物園で学名を学ぶ」について説明があった。
 1.学名とは、世界共通の全ての生き物につけられたラテン語(またはラテン語化された語)の表記による世界共通の学術公用語。
 2.種名は属名+種形容語(かつては種小名という語が用いられたが、種形容語は名前ではないので歴史的な用語になっているので注意)で構成される。この表し方を二語名法(かつては二名法という語が用いられたが前述の「種小名」同様、歴史的な用語になっている)といい、リンネによって体系化された。
 もう一つの資料「小石川植物園で学名を学ぶ Yリストによる学名」には57の植物の学名がリストアップされていて、これは歩く順番となっている。その植物の前に行き、学名について学びましょう、という横山先生の趣旨がうかがえた。
 以下、かいつまんで報告します。
▶ヒメタイサンボク Magnolia virginiana L.(モクレン科モクレン属): Magnolia はフランスの植物学者マニョル Magnol の名前にちなむ属名。資料に「人名に因む属名(人名に -a, -iaをつけて、女性形にする)。」とあり、「語尾が子音で終る、ia を付ける。」(原則)とあります。つまり、Magnol が名前で、語尾が子音 l なので ia がついている。virginiana は地名にちなむ種形容語です。本種は、北米大西洋岸南部に分布します。最後の「L.」はスウェーデンの博物学者・植物学者リンネ Carl von Linné のことで、この学名の正式な発表者であるということを示しています。リンネは、分類法を確立したことから、彼の名前だけは「L.」の一文字略記が許されています。
▶オオモクゲンジ Koelreuteria bipinnata Franch.(ムクロジ科モクゲンジ属):植物園は「フクロミモクゲンジ」と揭示しています。Koelreuteria はドイツの植物学者ケールロイター Koelreuter の名前にちなむモクゲンジ属の名。Bipinnata は二回羽状のような、の意。…(以下略)
【写真:オオモクゲンジ】




研究会の記録
(MAKINO 第126号 P12より抜粋)
第816回 野外研究会 2023-04-26

今熊山
牧野 澄夫(本会会員)

 今日は大勢だ(24人参加)。テレビ放送の影響だろうか。放送局の取材記者もいる。若い参加者も増えた。植物への関心が高まるのは素晴らしい。
 さて、今日はどんなスミレがみられるか楽しみだ。
 今熊山登山口でバスを降りて、農道をいくと最初に現れたのは、タチツボスミレ(❶)、続いて白花のマルバスミレ(❷)、全体に白い短毛の多い紫色のノジスミレもあった。畑のわきにはユリワサビ、セントウソウ、マムシグサ、エンゴサク、クサノオウ、ミヤマシキミと花の道だ。続いてニョイスミレ(ツボスミレともいう)(❸)があった。農道の最後にアメリカスミレサイシン(❹)の群落。生育旺盛だ。栽培種という。寄り道、寄り道で、なかなか歩程がはかどらない。1kmを1時間もかかって今熊神社下社に到着、10時半。神社で我々を待っていた取材記者に言われた。「もう来ないのかと思いましたよ」と。ここでもう終わりごろのミツバツツジの群落を見る。すばらしい眺めだ。よく手入れがされている。。…(以下略)
【当日の写真から:マルバスミレ】




研究会の記録
(MAKINO 第126号 P12–14より抜粋)
第817回 野外研究会 2023-05-13

南足柄 夕日の滝
森 弦一(本会会員)

 早朝はまだ降っていなかったが、集合時刻のころにはそれなりに降ってきた。夕日の滝はまあまあ奥地なので、状況の正確なところはわからない。ともかく行ってみましょうとなった。9時5分発のバスに乗車。途中のバス停で乗る人はおらず、ほぼ終点の地蔵堂まで直行バスのようだった。20分ほどの乗車時間で着いた。歩きはじめる前に、講師の松岡さんから資料が配られ、本日見るべき目玉について説明があった。ヤマトグサの花、エビラシダ、そしてヒトツバテンナンショウだった。何日か前に松岡さんが単独で下見に出かけたときは開花しているヤマトグサを見かけなかったので、それについては期待薄かもしれないということだった。…(以下略)
【当日の写真から:ヒトツバテンナンショウ】




研究会の記録
(MAKINO 第126号 P14–15より抜粋)
第818回 野外研究会 2023-06-0405

山梨県北杜市と周辺
福島 良子(本会会員)手塚 武博(本会会員)

 【1日目▷報告者:福島】 新宿西口駅前を予定通りバスは8時に出発。23名乗車、北杜市で高榮博先生と合流する。よい天気である。今回の講師は谷本𠀋夫会長、高榮博先生のお二方です。
 最初の目的のシミック八ヶ岳薬用植物園(山梨県森林総合研究所)で高榮博先生にお会いする。標高950m、広い園内(9.5ha)を散策しながら谷本先生の説明を受ける。樹木の知恵で、樹木が混み合うと枝先がぶつかるので互いにエチレンガスを出して成長を止め陽が当たるようにしているという。食用実木園では白い花の中に黒い葯が目立つサルナシ、初めて見るマルメロは葉も実も驚くほど多くの毛があり葉に触れたら柔らかな感触にビックリした。完熟するとカリンに似た香りがするのでセイヨウカリンともいわれる。…(以下略)
 【2日目▷報告者:手塚】 白州~川俣川東沢(吐竜の滝)へ。薄曇り。8時50分に宿舎を出発したバスは、白州町大武川橋に9時20分到着した。ここは、中央構造線に並行する断層に沿って南から北へ北上する釜無川の流れが、鋭角的に折れ曲がり南下する曲がり角で、石灰岩の露出する大きな崖(大武川岩)がある。ここでバスを降り、釜無川を渡って歩くこと10分、鹿よけの柵で囲われた諏訪神社中社の鳥居に着いた。この境内と、それに続く大武川岩が午前の観察地である。鳥居をくぐると直ぐに大木が一本立っていたが、谷本会長の説明でアサダの大木であることが分かった(❻)。普段見慣れたアサダに比べて随分大きい。
【当日の写真から:アサダの大木】