研究会の記録
(MAKINO 第129号 p9より抜粋)
828回 野外研究会 2024-02-12
冬の高尾山の植物-その生活ぶり
熱田典子(本会会員)

 午前10時高尾山口駅に集合。風は少し冷たいが快晴の中26名が参加。今日の講師は谷本会長です。会として高尾山には何度も訪れていますが、特に最近ではNHK趣味の園芸「牧野植物に出会う」の取材のために頻繫に訪れており、今日は取材時の話も聞けるかと期待しています。
 谷本会長を囲みケーブルカー乗り場へ移動、山頂駅に着き、早速、山頂駅前の樹林について説明を受けました。南斜面にはカシ類、常緑広葉樹林、そして北斜面にはイヌブナなどの落葉広葉樹林が広がっていて南北で対照的な様子は高尾山の特徴です。
 山頂駅から薬王院付近まで左右の樹林を観察しながら歩く。冬には落葉樹は葉がありませんので樹形がよくわかる。イヌブナは幹の根元に沢山のひこばえが出ており、主幹が枯れてもひこばえが成長することで個体の生命を維持しようとします。…(以下略)
【当日の写真から:イヌブナ

研究会の記録
(MAKINO 第129号 pp910より抜粋)
829回 野外研究会 2024-03-18
上野公園のサクラ
長島秀行(本会会員)

 江戸時代には、既に上野の山は花見の名所として親しまれ、不忍池周辺には茶屋が建ち江戸有数の行楽地であった。
 まず初めに、JR上野駅公園口前で、講師の谷本𠀋夫会長からは、プリント「上野公園の歴史」が配布された。そこでは、歌川広重の「東都名所上野東叡山全図」や「江戸名所図会」と共に、上野公園関連年表が示され、明治時代には既に東叡山寛永寺や清水堂、国立科学博物館や東京国立博物館の前身が創建されていたことがわかる。また、東部公園緑地事務所には「2024年うえの桜まつり・上野公園桜マップ」があり、参考になった。
 上野動物園方面へ進むと、植えてある桜ソメイヨシノはまだ花が咲いておらず、つぼみもほとんど見られない。近くにはソメイヨシノの基準木がある。基準木とはソメイヨシノの開花日を決める木のことである。…(以下略)
当日の写真から:ソメイヨシノの前で


研究会の記録
(MAKINO 第129号 p10より抜粋)
830回 野外研究会 2024-04-11
横浜市 新治市民の森
吉野弘子(本会会員)

 快晴の春の日、十日市場駅で集合。駅周辺はマンションや商店が立ち並び大都会の風景と変わらない。しかしそのエリアを抜けたとたん懐かしい里山が出現した。新治市民の森の入口の右手に孟宗竹林を見て階段をおりて里山交流センターに向かった。
 参加者は25名、案内は手塚武博会員。交流センターで資料や情報を得てから観察が始まった。子供の声を聴きながらフェンス沿いの車道を歩く。カラスノエンドウ、オオイヌノフグリ、ヒメオドリコソウ、スイバなど。車道から右に折れて小川沿いの径に入る。アカネ、ゲジゲジシダ、ゴヨウアケビ、コシダ、ミツバアケビ、ムシクサ等。100mほどみてひきかえし、交流センターの前を通り谷戸田へ入る。レンゲソウ、スズメノテッポウ、ヤブタビラコ、トキワハゼ、ハナイバナ、土手にはカラタチバナの花が咲く。スズメノヤリ、ウンナンオウバイ、ハコネウツギ、ヤマグワの花芽。谷戸の湿地にフキ、アケビの花、モミジイチゴの白い花、その隣にはウグイスカグラの白花と赤花。…(以下略)
【当日の写真から:ツクバキンモンソウ


研究会の記録
(MAKINO 第129号 p11より抜粋)
831回 野外研究会 2024-04-25
真鶴半島
牧野澄夫(本会会員)

 真鶴駅には総勢19名(内非会員4名)が参集した。今日の講師は日本シダの会、小田原植物研究会の松岡輝宏先生。もう3年連続(3回目)だ。ありがたいことだ。中川一政美術館前で下車した一行は、松岡先生から今日のコース説明を受けた。
 真鶴半島は箱根の外輪山が相模湾にそそいで3kmほど突き出た半島で、神奈川県立自然公園になっている。ここの森林は「魚付き保安林」に指定され保護されており、御林(おはやし)と呼び、大切にされている。江戸時代、小田原藩が萱原だった岬にクロマツ15万本を3年かけて植林したものという。今では温暖なその林にスダジイ、タブノキ、クスノキ等が入り込み常緑広葉樹の林がみられるようになった。
 灯明山に向かう。牧野富太郎博士が見つけたクジャクフモトシダの詳細な説明をうかがう。クジャクフモトシダはフモトシダ×フモトカグマ(牧野博士はイシカグマとした)で千葉県以西に分布。葉身は三角状被針形、小羽片の基部は広く羽軸について翼状となるのが特徴。…(以下略)
【当日の写真から:クジャクフモトシダ


研究会の記録
(MAKINO 第129号 pp1112より抜粋)
832回 野外研究会 2024-05-18
勝浦市 鵜原理想郷
坂本アヤ子(本会会員)

 鵜原理想郷駅に10時10分頃12名の参加者が集合。本日は総武線、中央線が7時前から1時間ほど事故で動いていない。にもかかわらず、参加者は予定通りに到着。駅には土屋講師が待っていて下さった。本日のコースの説明をうけ海岸に向かって歩く。鵜原海岸の白い鳥居方面に向かう。砂浜にすぐ入る。穏やかな海岸でハマヒルガオ、ハマボウフウ、ハマダイコン、ジシバリ、コマツヨイグサ、ハマボッス、オカヒジキ、イソギク、ヘラオオバコ、ネコノシタ(ハマグルマ)、ハマエンドウ(マメ科レンリソウ属)が大きな実をつけたものも見られた。広範囲にコウボウシバ、コウボウムギ、この二種はカヤツリグサ科スゲ属。花はほぼ終わっている。…(以下略)

研究会の記録
(MAKINO 第129号 pp1213より抜粋)
833回 野外研究会 2024-05-26
都立 葛西臨海公園
坂本アヤ子(本会会員)

 葛西臨海公園駅に集合。26名の参加者。日曜日なので人出がかなりあるが、あまりにも広いので混んでいると感じない。案内センターで地図やパンフレットをもらい、講師の仙仁径さんを紹介する。先生は都立大の牧野標本館で研究をされ、現在多摩市のパルテノン多摩で学芸員としてご活躍しておられます。
 最初に石垣の隙間に生えているメリケントキンソウ(❶;キク科イガトキンソウ属)をみる。南アメリカ原産、小さな草で、葉は細く肉厚でトゲもあり、かなり強い草らしい。草原の中に埋まっている状態で咲いている花が紫色のニワゼキショウ、薄紫色のオオニワゼキショウ、白花のセッカニワゼキショウ(❷)の3種を比較して観察できた。
…(以下略)
【当日の写真から:メリケントキンソウ


研究会の記録
(MAKINO 第129号 p13より抜粋)
834回 野外研究会 2024-06-05
国営 ひたち海浜公園
石黒律子(本会会員)

 ひたち海浜公園と聞けば、すぐに思い浮かぶのは「青いネモフィラ」と「赤いコキア」です。でも今回私たちは広い公園内の観光園地とは別の区域に咲くオオウメガサソウ他、海浜植物たちに会いに行きました。(参加者22名、内非会員1名)
 途中、バスの車窓から見えた「笠間栗」畑の木々は花盛りでした。締め切った車内には特有の匂いが届かず、これでもかこれでもかと続く花を気持ちよく観賞できました。今年の栗も豊作でありますように。
 さて、ここは元々旧陸軍の、終戦後は米軍の射爆場として使われ、1973年に返還された土地に作られた公園です。そういうことで、谷本先生曰く「穴はボコボコあいたかもしれないが、」自然が壊されずに残ったのだそうです。
 園内は、茨城生物の会の内山治男さんが丁寧に案内して下さいました。この時期はネモフィラも終わりコキア植え替え準備中の平日ということで、観光客もまばらでした。季節の希少植物としてオオウメガサソウ、ハナハタザオが入口チラシに印刷されていました。私はどちらも初めて観る花でしたので、どんな花なのかとても楽しみに、その場所に向かいました。まずはお目当てのオオウメガサソウです。…(以下略)
【当日の写真から:オオウメガサソウ