論考編 もくじ(会誌 Makino 102号より)






(MAKINO 第102 号 P4より 抜粋)
牧野富太郎先生の採集品(28)

 腐生ランの一種である本種にタシロランと新しく和名をつけられたのは牧野富太郎先生で、「植物学雑誌」20 巻236 号79?80 ページ(1906 年 明治39 年) に報告されている。本種の属名はEpipogum あるいは Epipogium で初めて報告されたのBonplandia1857: 36 ページ(1857)であるが、津山尚先生の論文(1967)や村田源・主原憲司先生の論文(1998)ほかによると、本種はアフリカ、オーストラリア・インド、ネパール、ミクロネシア、台湾等から見つかっていろいろな名前で報告されている種類がタシロランと同一種と考えられ、広分布種であることが確認されている。その結果、学名もEpipogum roseum Lindley が正しいとされるようになった。
 牧野標本館を探したところ、標本番号 MAK225 がこの報告のさいに記されている標本であることが判った。採集者は牧野先生ではないが、紹介したい。


▲この標本は長崎県諫早市の城山で、田代善太郎先生(1872-1947)が1906 年7 月5 日に採集されたものである。


参考文献
津山尚:日本およびその附近に産するタシロラン属について.植物研究雑誌 42: 295-311 (1967)
村田源:タシロランについて. 京都園芸 92: 27-33 (1998)



写真 1-1 田代善太郎採集品
写真 1-2 牧野先生のラベル
写真 1-3 牧野先生による学名と和名(新称)が加えられた田代メモ








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